『台湾少女、洋裁に出会う』鄭鴻生2019-04-19

もういい、みんなで引きこもろう

もういい、みんなで引きこもろう


『台湾少女、洋裁に出会う―母とミシンの60年』鄭 鴻生(天野 健太郎 訳 紀伊國屋書店)


4月19日

『台湾少女、洋裁に出会う 母とミシンの60年(母親的六十年洋裁歳月)』鄭鴻生(天野健太郎 訳)読了

日本統治時代の台南に生まれて17歳で洋裁店に。その後30代で洋裁学校を経営し、60年を洋裁で生きた少女の記憶を息子が語る物語。なんだけど、とても実直な筆致が好ましい。


4月19日

台南の路地の洋裁学校に通ってくる台南の様々な立場の女性たち、そのうち地方の娘や山岳民族の娘も数人単位でやってきて手狭になったので大借金して寮まで建てて、その建物は台南路地裏で一番高い三階鉄筋コンクリート作り。語り手の息子が屋上から得意になって街を見まわすと、


4月19日

それからどんどん周りも高いビルが出来ていく。女生徒たちの卒業写真で分かる変わっていくファッション。日本統治時代から現代までの街の移り変わりがリアルに立ち上がってくる。でも、台南にはきっと変わらないものもあるんだろうなと思わせる好著。


4月19日

同作家には父親の物語もあって、この『洋裁』にもチラチラ登場しては色々想像させる面白いひと。訳者あとがきでそのうち紹介したいとあったのだが。天野さん、早すぎますよ…。




『台湾少女、洋裁に出会う―母とミシンの60年』鄭 鴻生(天野 健太郎 訳 紀伊國屋書店)

『若い芸術家の肖像』ジョイス2019-04-07

うちにある、ジョイスもの一式

うちにある、ジョイスもの一式


『若い芸術家の肖像』ジョイス(大澤 正佳 新訳 岩波書店)


3月28日

#今何読んでますか見た人もやる

『若い芸術家の肖像』ジョイス(大澤正佳 新訳)


3月28日

『わ、若い芸術家のし、肖像』を思い出してから…(汗)


3月30日

うちにある、ジョイスもの一式。なんと柳瀬先生のユリシーズを全部揃えてなかったことが判明。もちろんフィネガンは付箋のあたりで断念してます。


4月7日

『若い芸術家の肖像』ジョイス(大澤正佳訳 岩波文庫)読了
とりあえず折り目をつけた3カ所の写真。
第2章 p.132 スティーヴンとエレンが馬車で接触した次の日、詩を書こうとして失敗する場面。


4月7日

第3章 p.248 アーノル神父の地獄の説教で、神はどんなに小さな罪も見逃さないと脅す場面。


4月7日

第5章 pp.395-396 学生リンチを相手にアクィナスを援用して、美の本質的な特質は「全体性、調和、そして光輝」であると論じる場面。


4月7日

第2章の部分は、オブジェクトから本質的な美のドメインルールを蒸留する少年スティーヴン。

第3章の地獄では、たとえたった一つの小さなバグであっても、この世はモノシリックなクラスであるために神はけっして見逃してはくれないという教え。


4月7日

そして第5章。まさに、境界づけられたコンテキスのなかに美の本質的全体性があり、この美のコアドメインは疎な部品のメッセージによる調和によって構成されていること。さらに、このつづきのページでは、その抽象性はイデアではなくオブジェクトそのものであると釘までさしている。
ジョイス恐るべしw




『若い芸術家の肖像』ジョイス(大澤 正佳 新訳 岩波書店)

『モラル・トライブズ』2019-03-21

おでかけの時間ですが、遊んでほしいと言ってます

おでかけの時間ですが、遊んでほしいと言ってます


『モラル・トライブズ』 ジョシュア・グリーン (竹田 円 訳 岩波書店)


3月17日

ああ、そういや、やっと『モラル・トライブズ』を読んでます。こんなに内容あっても読みやすいのね。早く掘り出せば良かった。


3月21日

pp.370-374
うーん、ロールズなんか富と効用を同一視しているから、功利主義が全体効用を最大化するために奴隷制のような不平等を是認するかのように攻撃してきて迷惑千万とイキってるように見える。


3月21日

でも、グリーン自身が、充分な富を持つ者は富が増えても幸福はさして増えない限界「幸福」の逓減を主張しているように、自分が効用と幸福を過度に同一視してんじゃないか?


3月21日

つまり、一方では定量化が難しいと言う「幸福」を、一方で「量として足しあわせて最大になればいいなら反道徳的な社会も認めるから功利主義はだめだ」と言われると、


3月21日

「人間の本性」によって極端な他者の抑圧によって失われる「幸福」の量は抑圧者が得る「幸福」の量を必ず上回るから現実に功利主義が極端な抑圧社会を認めることはない、と答えている、ように見える。


3月21日

いや、現実路線の功利主義には思想上、何の不満もないんですけど、量なのか質なのかいろいろ書いてきてもやっぱり曖昧なのは私が勘違いしてるからか。
そのうちアマルティア・セン先生のケイパビィリティ・アプローチが出るかなあと思ってたけど、ここまできても出ないのは多分認めてないからかなあ。


3月21日

最終部でグリーン先生に怒られそう。


3月23日

けっきょく、幸福は厳密に測らなくても社会で最大化されるかどうかはわかる、というケイパビィリティ・アプローチもない説明に終始。うーん、いや、「深遠」かどうかはおいておいても、タイプ2(グリーン先生言うところのマニュアルモード)を働かせた実用主義で、原理主義的な善ではなく可能な最善を


3月23日

目指そうというのはまったくその通りだと思いますし、道徳の進化論的にはタイプ1(グリーン言うところのオートモード)が為さしめることを善としたのであってその逆ではない、というのも納得できるのですが、最終的に、だからなに? という感想しか残らないのが唯一残念なところであります。


3月23日

いや、いい本なのは間違いないけど、これが届くべきところにはぜったいに届かないだろうな、と思うわけです。まあ、哲学書だから実用主義でも実用的である必要はないわけですが。いや、とてもいい本です。本当に。


3月23日

あ、『モラル・トライブズ』ジョシュア・グリーン 読了。(検索の都合上の読了ツイートでした)


3月23日

ケイパビィリティ・アプローチに私がこだわるのは、幸福のような曖昧なものではなく、あくまでどんな政策(選択)がどんな効用を得る自由が潜在的に実現されるかを推し量って組み合わせの最善を検討しようとするアプローチなので、このマニュアルモードには相性がいいのではないかと思っていたのです。




『モラル・トライブズ』 ジョシュア・グリーン (竹田 円 訳 岩波書店)

『組織パターン』James O. Coplien/Neil B. Harrison2019-03-15

チャオ 焼かつおをご恵贈頂きました

チャオ 焼かつおをご恵贈頂きました


『組織パターン チームの成長によりアジャイルソフトウェア開発の変革を促す』James O. Coplien 、Neil B. Harrison (和智 右桂 訳 翔泳社)


3月15日

もはや組織を変えるのは諦めた私ですが、『組織パターン』James O. CoplienとNeil B. Harrison 読了。下手すりゃ四半世紀も前の研究ですが、弊社、これのさらに四半世紀は遅れてますわ。出発のパターン言語が「信頼で結ばれた共同体」ですから。永久に無理かも。


3月15日

しかしまあ、兎に角、昨今は小さな組織(10名前後が最大)でないとコミュニケーションオーバーヘッドが大き過ぎて生産性ダウンが常識になりつつありますが、弊社、その単位で中間管理職が増え続け、みんな手前んとこの目標があるもんだから、いやー、なんも決まらない。アホの子保育園。


3月15日

(事実を元にした事実です)




『組織パターン チームの成長によりアジャイルソフトウェア開発の変革を促す』James O. Coplien 、Neil B. Harrison (和智 右桂 訳 翔泳社)

『人間界の諸相』木下古栗2019-02-24

爪切りは ちょっとこわいが 我慢する

爪切りは ちょっとこわいが 我慢する


『人間界の諸相』木下古栗(集英社)


2月24日

『人間界の諸相』木下古栗 読了

読むひとは読むし読まないひとは読まないし下手に薦めて間違って読んだ真っ当なひとから人でなしと思われるのも心外なのでこの際言っておくが正しく人生を生きているひとは読まない方がいいのでパハップス全人類必読。




『人間界の諸相』木下古栗(集英社)

『交雑する人類』デイヴィッド・ライク2019-02-13

足が長く見える

足が長く見える


『交雑する人類  古代DNAが解き明かす新サピエンス史』デイヴィッド・ライク (日向 やよい 訳 NHK出版)


2月13日

『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』 | NHK出版 読了


2月13日

『交雑する人類 古代DNAが解き明かす新サピエンス史』 デイヴィッド・ライク 読了。

タイトル通り、とにかく人類は移動に次ぐ移動で交雑に次ぐ交雑を繰り返したことが古代DNAと現代人のDNAを解析する事で明らかになっていくスリル。

これを合わせて読むと大吉。
twitter.com/march_hare_bro/status/1061224199723741189?s=19…


2月13日

第三部は、人種差は虚構で個人差があるだけだという近年のドグマと、ゲノム解析で明らかになってきた集団の系統を拡大解釈したナイーブな人種主義の復活の両方を批判する所信表明ですが、『ゲノムで社会の謎を解く』ダルトン・コンリー&ジェイソン・フレッチャーを読めばさらに難しい問題が露わに。




『交雑する人類  古代DNAが解き明かす新サピエンス史』デイヴィッド・ライク (日向 やよい 訳 NHK出版)

『ダイナー』平山 夢明2019-02-04

平山夢明先生の表彰状

平山夢明先生の表彰状


『ダイナー』平山 夢明(ポプラ社)


2月2日

つい、文庫『ダイナー』購入


2月2日

夕食前に平山夢明『ダイナー』を読むのは自殺行為かも。


2月3日

帯に藤原竜也主演で映画化と書いてあるんだけど、ボンベロってこと? ボンベロ、おれの中ではもうピエール瀧の一択よ?


2月4日

『ダイナー』平山夢明 読了。いんやー面白い。マルドゥック・スクランブルのカジノシーンを極上の血と肉とチーズと脳漿とソースで重ね合わせてみたら、こんなに美味しい小説が出来ました、って感じ。すんません、今頃読んで。でも藤原竜也はボンベロじゃなくてカナコにしてください。


2月4日

解説が立ち直れないくらい厳しいやつ?


2月4日

作品を鑑賞するときに、一切の予備知識なく「無知のベール」に包まれていた場合、評価する勇気が私にはあるか。


2月4日

ある。なぜならほんとに無知だから。




『ダイナー』平山 夢明(ポプラ社)

『分かちあう心の進化』松沢哲郎2019-01-27

液状化していく猫

液状化していく猫


『分かちあう心の進化』松沢哲郎 (岩波書店)


1月27日

『分かちあう心の進化』松沢哲郎(岩波科学ライブラリー) 読了。「ヒトが手を使えるようになったのはなぜ?」に99%「二足歩行するようになったから」と答えるでしょうが、よく考えるとチンパンジーは四本とも「手」なんですよね。答えはなんと「赤ん坊をあお向けに寝かせておけるようになったから」


1月27日

四本の手のうち二本が足になったが正しい進化とのこと。なーるほど。そんな京都大学霊長類ちぱんじんの連綿たる研究を面白おかしく紹介しながら、「ヒトの心」がヒト科四属とどう異なるを客観的方法での室内実験と野外実験によって解き明かしていく、比較認知科学をいいとこ取りで読ませる本でした。


1月27日

言語がコミュニケーションの道具として進化したと決めうちするとか、互恵的な行動をヒト固有の愛に結びつけるとか、私は好きではないけど(好き好きじゃないけど)、チンパンジーのアイはまだ存命よ。 下記URLへ。
「ようこそ | 京都大学霊長類研究所 - チンパンジーアイ」
http://langint.pri.kyoto-u.ac.jp/ai/ja/about/index.html…


7月3日

もちろん、教育しても無駄だという立ち位置なんですがね。




『分かちあう心の進化』松沢哲郎 (岩波書店)

『密偵』コンラッド2019-01-25

かわいー

かわいー


『密偵』コンラッド (土岐 恒二 訳 岩波書店)


1月25日

『密偵』コンラッド(土岐恒二訳) 読了

濃密なディスコミュニケーション心理劇な上に、壮絶なエンターテイメントで、なおかつ度肝を抜かれる叙述トリックを駆使した物語。政治ものじゃないよ! 『闇の奥』や『ノストローモ』に匹敵する傑作なのに、なんで絶版なのよ。




『密偵』コンラッド (土岐 恒二 訳 岩波書店)

『内面からの報告書』ポール・オースター2019-01-08

🌀🌀

🌀🌀


『内面からの報告書』ポール・オースター (柴田 元幸 訳 新潮社)


1月6日

あ、昨日からオースター『内面の報告書』の続きを読み始めたので、5日くらいでした。ブルブル震えるような離脱はなくどんどん気分が落ちる程度。読んだから上がるわけではないですが。


1月8日

『内面の報告書』オースター 読了

四部構成ですが、白眉は少年時代に観た映画『縮みゆく人間』と『仮面の米国』を、読者の目に少年ポールと老年期オースターと並んで観ているように語り直す名人芸の第二部。これだけでも読んでみてくだされ。


1月8日

リディア・デイヴィスに宛てた若き日の手紙から忘れていた自分を解読する第三部は、まあ、オースターならこうするよなという、いい意味でも非-いい意味でもオースターらしい処理。最後の手紙はオレがリディアなら、即絶交だが。




『内面からの報告書』ポール・オースター (柴田 元幸 訳 新潮社)