『メンタル・コーパス』ジョン・R.テイラー2018-09-02

最後の4行はいったい何を言ってるのかわからんのですが。この直前にさんざんコーパスなんぞ深層構造の解明になんの役にも立たんと言いながら、これは共示としてのコノテーションそのものじゃないのかしらん。

最後の4行はいったい何を言ってるのかわからんのですが。この直前にさんざんコーパスなんぞ深層構造の解明になんの役にも立たんと言いながら、これは共示としてのコノテーションそのものじゃないのかしらん。


『メンタル・コーパス』ジョン・R.テイラー (著 西村義樹/編訳 平沢慎也/編訳 長谷川明香/編訳 大堀壽夫/編訳 古賀裕章/訳 小早川暁/訳 友澤宏隆/訳 湯本久美子/訳 くろしお出版)


8月6日

テイラー先生の『メンタル・コーパス』なんつうのを読んでるわけですが、生成文法的な「辞書+文法書モデル」を批判的に検討するために大量の例外的なコーパスが並んでいるので、そもそも英語に不自由してる私はさらにどんどんダメになっていく気がする。


8月25日

p.241
うーん、accidentとdisasterは規模が相当違うと思うんだが。「外出するたびに雨に降られるaccidentsにあう」とか複数形が多くなっても、「毎年、行く先々で大地震に遭遇してdisastersざんまいさ」とはあまり言いそうもないから、単複の比率(accidentの方が多い)は世界のありよう通りでは?


8月25日

循環論だー言語相対論だーなどといつものように疑いながら読んできましたが、「多義性」のpp.367-371で鮮やかに領域マトリクスが立ち上がり、無数の概念領域の交差点に「語」が浮かんでいて「隣の」語と結びつくことで語の共起とともに意味も共起させる様がありありと目に浮かび、やられました。


8月25日

それもこれも、本当にそんな無数の概念領域マトリクスと語のネットワークを蓄えて、必要に応じて共起できるだけの容量を人間の長期記憶とワーキングスペースが持てるのかにかかるわけですが、これが認知機能的には最も低コストでたぶん無理なくできてしまうだろうという見込みがありそうなのが強い。


8月26日

p.389 の例文でいきなり笑う。

At the tine, Comdisco was busy taking advantage of IBM's 3093-E systems, which would eventually become the foundation of today's ESA architecture base.

がんばれ、コムディスコくん。


8月26日

さらに、p.391

We arrived home just after midnight on the morning of the 24th, but we have been too busy trying to sleep to get to the computer.
コムディスコくんたち、もう寝ていいよ。


8月26日

とりあえず読み終わった。コムディスコくん、IBMのみなさん、おやすみ。


8月29日

最後の4行はいったい何を言ってるのかわからんのですが。この直前にさんざんコーパスなんぞ深層構造の解明になんの役にも立たんと言いながら、これは共示としてのコノテーションそのものじゃないのかしらん。


9月2日

『メンタル・コーパス ―母語話者の頭の中には何があるのか』ジョン・R・テイラー読了

というわけで、生成文法が一貫して、言語を理論化するためには不要な雑音と退ける「具体的に話され書かれている言語コーパス」こそが言語の理論の中核にあるのだと論じる本格的な本。トマセロよりも楽しい。


9月2日

この分野には素人で恐縮なのですが、ていうか本当に素人なのですが、チョムスキーもテイラーも言語獲得する際の土台がなにもないのにたかが数年で子供が母語習得するなどとは当然思っていないので、言語に構造化された統辞部門があるのかないのかという相違点にさえ目をつむればw根本的に違うのは、


9月2日

自然言語が進化的に得られたというまったく同じことを、言葉を変えていってるだけなのではないか、と思うのです。

で、ここからが素人です。

脳内のI-言語の構成要素は、認知心理学的な何千何万というメンタル・スペースの交差点に立つ信号機みたいなもんではないか、と私は思いました。


9月2日

フォコニエさんがなにいったか知らないところが素人なので、メンタル・スペースを概念空間と言い換えてもいいです。要するに「高いところ」という概念を「高所概念地図」と呼ぶことにして、生まれたての子はこの地図にはRPG始めたばかりのぼんやりとしたマップだけど「高い所」という認知に関する


9月2日

情報が書かれる役割は決まってるという、そういう地図。同様に「怖いもの」という概念には「恐怖概念地図」が生得的にある。そんな地図が何千何万と生まれたての坊にも嬢にもある。

で、坊がタンスの上にいくと視覚深度か身体的感覚でタンスの上は「高所概念地図」にぼんやりと書かれるわけだ。


9月2日

これはたぶん別にヒト特有でもない認知的な働き。

次に、当然タンスから落ちるわけですが、これは身体的感覚その他から間違いなく「恐怖概念地図」に書かれる。

で、これら二つの地図の交差点に「タンスから落ちる」という「語彙」が生まれ、一方から見れば「高い」という青信号、他方から見れば posted at 17:30:12


9月2日

「怖い」という赤信号として機能(シンボル)化されて両方の地図にプロットされる。

以後、「タンスから落ちる」というイディオムが「高い」と「怖い」の多義性をもってi-言語の構成要素として使用される。

ここからヒト特有の言語の出番で、高いことと怖いことの概念空間を同時に活性化するために


9月2日

交差点に立っている「タンスから落ちる」というイディオムを使う。 こんなふうに、生得的に備わっている膨大な認知的概念空間を脳内で効率的に再現してたぶん他人に伝えるために、本質的に多義的な語彙=イディオムを構成要素とした「普遍文法」が概念空間の交点で淘汰され進化してきたのではないか。


9月2日

もちろん、今や生まれた子は、タンスから落ちなくても「高所概念地図」と「恐怖概念地図」の交点にはイディオムのスポットがあり、ここに具体的な個別言語が入れるようになっているわけです。 なので、「山」という「高所概念地図」語彙と「暗い」という「恐怖概念地図」語彙が同時に地図を活性化


9月2日

すると、ほぼ自動的に「タンスの上」スポットがスパイクしてその個別言語のイディオムが書き込まれる。

ほら、こんな感じで、少ない言語体験から、芋づる式に概念地図の活性化と交点のスパイクでいろんな言い回しを使えるようになるのではないかという、素人ならではの思いつきをだらだらと


9月2日

書いてみました。お目汚し失礼しました。

たぶん、この程度のことはもう何周も提案されているのだろうなと確信しておりますが、なにしろ、なぜここまで生成文法と認知言語学がののしりあうのかわからんのですわ。テイラーさんのは2012年の本だし、チョムスキーさん相変わらずですしねー。


9月2日

途中「根本的に違うのは」とあるのは削除漏れ。




『メンタル・コーパス』ジョン・R.テイラー (著 西村義樹/編訳 平沢慎也/編訳 長谷川明香/編訳 大堀壽夫/編訳 古賀裕章/訳 小早川暁/訳 友澤宏隆/訳 湯本久美子/訳 くろしお出版)

『統辞理論の諸相『方法論序説)』チョムスキー2018-09-02

このあたりも、ちょっとどうかと思う。さすがにそんな文法を赤ん坊が予想したりはせんのではないか。

このあたりも、ちょっとどうかと思う。さすがにそんな文法を赤ん坊が予想したりはせんのではないか。


『統辞理論の諸相 方法論序説』 チョムスキー (福井 直樹 訳 , 辻子 美保子 訳  岩波書店)


8月27日

私の中で株急降下中の生成文法の王様チョムスキー『統辞理論の諸相『方法論序説)』を読んでバランスをとってみる。


8月28日

p.50 容認可能と文法的を混同すんなや、とチョムさまは言うとる。


9月1日

このあたりも、ちょっとどうかと思う。さすがにそんな文法を赤ん坊が予想したりはせんのではないか。


9月1日

昔の行動主義全盛時ですから、このどっちつかずな態度はうなづけるとしても、もうそろそろ生成文法と認知言語学はともだち、こわくないよ、というひとはいないのかな。きっといるよね。


9月2日

いちおう、訳者あとがき含めて、『統辞理論の諸相 方法論序説』チョムスキー 読了

こっちにとくに感想はないのだが、『メンタル・コーパス』(テイラー)との絡みで、素人ならではの斬新なアイデアを思いついたので神も笑覧あれ。




『統辞理論の諸相 方法論序説』 チョムスキー (福井 直樹 訳 , 辻子 美保子 訳  岩波書店)

『ウールフ、黒い湖』ヘラ・S・ハーセ2018-09-09

スリランカ料理イベントへ行きました

スリランカ料理イベントへ行きました


『ウールフ、黒い湖』ヘラ・S・ハーセ (國森 由美子訳 作品社)


9月9日

『ウールフ、黒い湖』ヘラ・S・ハーセ 國森由美子訳 作品社 読了

はやく、ハーセ作品集刊行していただきたい。もちろん國森さんの翻訳で。


9月9日

「ウールフは、ぼくの友だちだった。」

旧オランダ領東インド(インドネシア)で、兄弟のように育ったウールフとぼく。ぼくは友だちのなにを知っていたのか。

伝統的な美しい筆致と、とても1948年に発表されたとは思えない現代性をもつ、体感がとても長い中編小説。著者あとがきと訳者解説もお得。


9月9日

失われた植民地を故郷とする作家の70年も前の作品が現代にも力を持つのは、全てのひとの幼い頃の記憶が、主人であるはずの自分から独立していく植民地のようなものであるからなのかもしれない。




『ウールフ、黒い湖』ヘラ・S・ハーセ (國森 由美子訳 作品社)

『チョムスキー言語学講義』チョムスキー/バーウィック2018-09-17

今日はベトナム料理教室

今日はベトナム料理教室


『チョムスキー言語学講義 ─言語はいかにして進化したか』 ノーム・チョムスキー / ロバート・C・バーウィック 渡会 圭子訳 (筑摩書房)


9月17日

『チョムスキー言語学講義 言語はいかにして進化したか』チョムスキー/バーウィック 読了

原タイトルは
『Why only us: Language and Evolution』by Robert C. Berwick and Noam Chomsky

主著者はバーウィック? いや、こんな絶対に売れない翻訳を出していただけるだけでちくま学芸文庫に感謝。


9月17日

ざっくり要約すると、ホモ・サピエンスだけがもっている言語の基本能力は、AとBをくっつける「併合(マージ)」能力だけ。AとBがどの順番になるかなどは言語能力じゃなくて言語運用の話。遺伝子レベルの進化にかかわるのは「併合」だけ。正確に言うともう一つ。「語に類する原子的要素」を頭の中に


9月17日

っていること(心的辞書)。

なぜなら、言語はコミュニケーションの道具類ではなく、心的辞書のパーツを脳内で「併合」して推論や計画することを飛躍的に向上させたからこそ、ホモ・サピエンス内のジーンを席巻した、という筋書き。

ぼくのわからない問題は大きくふたつ。


9月17日

ひとつは、「併合」が起こる条件ってなんなの? ちらちら本文に出てくるように、結局「原理・パラメータ」で操作されるなら、80年代からこっちのくそ人工的なUG「も」遺伝子レベルの言語器官じゃん? こういうのを無限後退っていうんじゃない? 最後の数ページの脳内神経繊維束の環はジョーク?


9月17日

もうひとつは、完全に説明する気なし(「その脳内の実体はわかっていない」)の「心的辞書」。霊長類レベルで「語彙」を持っていないと断言してはる(pp.182-194)ので、いつ、その「語に類する原子的要素」がホモ・サピエンスに現れたのか不問の点。


9月17日

結局、著者ふたりは、言語の進化はよくわからないけど、他の動物の認知能力とは違うから、ホモ・サピエンスが枝分かれした20万年前からアフリカから旅立った6万年前までのどこかでなんか起こった。期間すげー短いから、きっとほんのちょっとした「配線」の変異が起こっただけだけど


9月17日

「併合」は目の玉みたいな長い自然淘汰なんかなく簡単にできるようになったんじゃね? なにを「併合」するのかは、ほら、なんか鳥の鳴き声とかなんか何億年ものなんかの適応があるでしょ、きっと。

という、敗北宣言に近いくらいの丸投げっぷり。

「運用でカバー」がこんなところに出てくるとはw


9月17日

と、公式にディスった上で、チョムスキーが2016年にこんなことを発表できるんだから、おれのこのアイデアも捨てたものではなかろうと思った。なんたって、「語に類する原子的要素」は「概念」の交点に発生するシンボルで、交点を共有すれば芋づる式に「併合」できるんだもん。




『チョムスキー言語学講義 ─言語はいかにして進化したか』 ノーム・チョムスキー / ロバート・C・バーウィック 渡会 圭子訳 (筑摩書房)

『傭兵隊長』ジョルジュ・ペレック2018-09-25

家人の昼寝を見守る会

家人の昼寝を見守る会


『傭兵隊長』ジョルジュ・ペレック (塩塚 秀一郎 訳 水声社)


9月25日

いま読んでいる本。
『人間の由来』ダーウィン
『傭兵隊長』ペレック
『世界の行動インサイト 公共ナッジが導く政策実践』OECD

3つ目がなんか思ったほどの具体例のツッコミがないのでつらい…。でも高かったので読む。こういう宣言をすると読了できるナッジ。


9月25日

『傭兵隊長』ペレック 読了。後々の遊戯性を思えばどストレートな豪速球。やはり若書きでしょうか。『美術愛好家の陳列室』が虚実を精魂込めて混ぜ合わせた面白絵画小説なら、『傭兵隊長』は実のために虚に飛び込むと、間違いなく間違い、失敗するべくして失敗することを身を持って示した小説かな。


9月25日

だから、技巧と論理を凝らして突き詰めたあげくに瓦解してしまう失敗小説が大好物の私には大変面白かったのであります。




『傭兵隊長』ジョルジュ・ペレック (塩塚 秀一郎 訳 水声社)