チャールズ・ダーウィン『人間の由来』 ― 2018-10-20
穴をあけられてインテリアにされた異端の鳥
チャールズ・ダーウィン『人間の由来』 (長谷川 眞理子 訳 講談社)
9月20日
「抽象的な言語をほとんど持たず、四より大きい数は数えられないような、オーストラリアの惨めな未開人の働きものの妻が、自意識を行使して自分の存在の性質について考察することは、ほとんどないだろう。」
ダーウィン『人間の由来』
いまでもそう思ってる輩がおる気がしてきた。
9月23日
いま読んでいる本。
『人間の由来』ダーウィン
『傭兵隊長』ペレック
『世界の行動インサイト 公共ナッジが導く政策実践』OECD
3つ目がなんか思ったほどの具体例のツッコミがないのでつらい…。でも高かったので読む。こういう宣言をすると読了できるナッジ。
10月1日
というわけで、あたしゃ、ダーウィンのヘイト本(『人間の由来』第一部)を乗り越え、第二部「性淘汰」にたどり着いた。
やっとこの年齢になってダーウィンは面白いってわかったんだよね。
教養をあえて定義するなら、面白いことが増えること、じゃなかろうか。
10月5日
ダーウィン、シミ(昆虫)には容赦ない。
「シミ目 この目のメンバーは、昆虫綱の中では下等とされている。彼らは、羽がなく、色は地味で、みっともない、ほとんど奇形のような頭とからだの形をした、小さな昆虫である。」
10月6日
ちなみに、直後で引用しているJ・ラボック卿(Sir J. Lubbock)の言葉。
「このような小さな生物がたがいに相手の気を惹こうとするさまを見るのは、たいへん楽しいものだ。雄は雌よりもずっと小さいが、雌の周りを走り、たがいにからだをぶつけあい、面と向かって立ち、
10月6日
二頭の遊び盛りの仔ヒツジのように、あとになったり先になったりして走る。しばらくすると、雌は、走り去るようなふりをし、雄は、おかしな怒ったような態度で追いかけ、雌の前に立ちはだかって対面する。雌は、恥ずかしそうにからだをそむけるが、雄は素早く雌の前に回り、触角で雌に触るようだ。
10月6日
しばらくの間、彼らは面と向かって触角で触れ合っており、まったく二匹だけの世界にいるようである」
10月8日
しかし、性淘汰を裏づける雌雄の形質の差を延々と様々な属種で列挙していく文体は、ピケティの『21世紀の資本』と同じく、どこを読んでいるのかもうここは読み終わったのではないかいつまでも終わらないのではないかなどという眩暈を起こす。
10月8日
あと、これはたぶん誤訳じゃないかな。
「擬態している方の種は、いかようにも変われるはずであるから、最終的にはそれが属しているグループの他のメンバーとはまったく異なる外見や色彩を持つことにもなるだろう。色彩にほんのわずかだけ変異が起こっても、
10月8日
多くの場合、それだけで他の保護されている種と十分に似るようになって、その変異が保存されることにはつながらないだろうから、鱗翅目の多くの種では、色彩にかなりの量の、しかも突然の変異が起こることがよくあるとつけ加えておく方がよいだろう。」
10月8日
たぶん、本来はこういう意味ではないか。
「擬態している方の種は、いかようにも変われるはずであるから、最終的にはそれが属しているグループの他のメンバーとはまったく異なる外見や色彩を持つことにもなるだろう。色彩にほんのわずかだけ変異が起こっても、
10月8日
多くの場合、それだけで他の保護されている種と『十分に似るようにはならないため、』その変異が保存されることにはつながらないだろうから、鱗翅目の多くの種では、色彩にかなりの量の、しかも突然の変異が起こることがよくあるとつけ加えておく方がよいだろう。」
それが正しいかは脇に置いて。
10月8日
もともと込み入っているので、誤訳があると擬態を見破りながら読まなきゃいかんので時間がかかる。
(私の読み間違いであればご容赦を)
10月8日
あ、いまわかった。
「擬態している方の種は、いかようにも変われるはずであるから、最終的にはそれが属しているグループの他のメンバーとはまったく異なる外見や色彩を持つことにもなるだろう。多くの場合、『色彩に起きたほんのわずかの変異だけで』
10月8日
他の保護されている種と十分に似るようになって、その変異が保存されることにはつながらないだろうから、鱗翅目の多くの種では、色彩にかなりの量の、しかも突然の変異が起こることがよくあるとつけ加えておく方がよいだろう。」
てことか。
10月8日
要は、その変異がほんの少しでも生存優位になるでなければ保存される淘汰圧はかからないから、きっと蝶の翅の色彩はけっこう一気に変わったんじゃね?という意味だけど。
10月8日
擬態がどの程度で擬態としての効果を持つかという話になると、なかなか今でも熱いそうな。
10月8日
しつこい
「多くの場合、『色彩に起きたほんのわずかの変異だけでは、』他の保護されている種と十分に似るようになって、その変異が保存されることにはつながらないだろうから、鱗翅目の多くの種では、色彩にかなりの量の、しかも突然の変異が起こることがよくあるとつけ加えておく方がよいだろう」
10月8日
けっきょく
「色彩にほんのわずかだけ変異が起こっても、多くの場合、それだけで『は』他の保護されている種と十分に似るようになって、その変異が保存されることにはつながらないだろうから、鱗翅目の多くの種では、色彩にかなりの量の、しかも突然の変異が起こることがよくあるとつけ加えて(…)」
10月10日
「ところがどっこい」、一名、わからないとのことなので。一連のリツイートで直前のある方が全否定している「アソコでアレを読む」を、アレの翻訳者その人が絶賛していて、どっちかがアレの根本的な読み方を間違えているという結論になるのだけど、そんなことこわくてアレだよ!
10月20日
やったー! 『人間の由来』ダーウィン 読了! 丸1ヶ月じゃん。いやーなんつうか。人間の由来の話なのに人間の扱いが雑きわまりないの。アリの方がずっと上。アリラブ。
10月20日
人種の話はまあ有名なのでいいとして、あれだけ「種の連続性」にこだわったダーウィンが、なして人間の祖先たちが「雄による雌の獲得競争」という性淘汰によって雌雄の形質差異を進化させたと喝破しながら、唐突に「人間は雌が雄に選ばれる」と何のひっかかりもなく言うのかというとこね。
10月20日
(人間は)雌の方が着飾るという意味で外面的にはそう見えるが本当にそうか?とか、雄が地位や名誉や財産に執着するのは…とかすっているのに、とか。もちろん、そういうとこへの反証もふくめて、その後の150年のものの考え方を決定づけてしまったという恐ろしい書であるので。アリラブ。
10月20日
最寄り駅近くの小書店がひと棚使って「人文学と科学」テーマで並べておって、これは応援しなけりゃという思いで、『魂に息づく科学:ドーキンスの反ポピュリズム宣言』を買ったのだが、早川書房じゃん! すぐに電子書籍になるじゃん! 悔しいから次読む。
『魂に息づく科学』リチャード・ドーキンス ― 2018-10-29
リラックス・ゴブさん
『魂に息づく科学──ドーキンスの反ポピュリズム宣言』リチャード・ドーキンス(大田 直子 訳 早川書房)
10月22日
ドーキンス、きっぶがいいね。江戸っ子だね。
10月29日
『魂に息づく科学:ドーキンスの反ポピュリズム宣言』ドーキンス 読了。電化書籍化寸前w これはそもそものドーキンスファン以外にはあんまり響かない気がするのだが。しかも、ドーキンスファンはデジャヴに襲われる感じ。とりあえずまずは『利己的遺伝子』から読んでくれ、と言いたくなる。
10月29日
その上で、ドーキンスファンとして言いたいのは、ピーター・シンガーばりの動物苦痛論の時には、非理性的な動物と人間の連続性を遺伝子の乗り物として強調しながら、宗教のような進化の「副作用」を理性(科学)で乗り越えようとアジるときには、人間と動物とを明確に分断していて居心地が悪い。
10月29日
それはとにかく、歳くっていよいよ理性にとりつかれた鬼のようなドーキンスとあわせて、このところ話題のジーヴスもののパロディを二編も載せて悦に入っているドーキンスも楽しめます。
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